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「認知症」しかカバーしない平成29年3月の改正道路交通法

平成29年3月12日から、改正道路交通法が施行され、新しい制度がスタートし、「準中型運転免許の新設」「高齢運転者対策の推進」の2点が改正されました。内容は、加齢による認知機能の低下に着目した臨時認知機能検査制度臨時高齢者講習制度の新設や、その他制度の見直し等です。

警視庁HPより〜平成29年3月12日 スタート 改正道路交通法 https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo/kaisei_doukouhou/leaflet.pdf

臨時認知機能検査制度とは

検査で「認知症の恐れ」と判定された75歳以上の運転者は、違反の有無にかかわらず医師の診断が義務づけられ、認知症と診断されれば、免許停止か取り消しとなる

というものですが、「認知症」に限定された法改正であり、実際事故を起こす高齢者の多くが、一般的な運動能力や判断力の低下などが影響していると、されています。

「認知症ではない」とされているドライバーの起こした事故

以下の事故は全て、「認知症ではない」とされているドライバーの起こした事故です。

認知症の診断は専門家でも難しい

医師1人につき患者2000人?!認知症専門医もまだまだ足りない現実

認知症の診断は、症状の個人差も大きく、認知症専門医ですら診断が難しいものと言われており、そもそも、その認知症専門医の数もまだまだ少ないことが現実で、地域差もバラバラです。

そのような状況のなか認知症と診断されれば免許停止か取り消しという制度は、果たして意味はあるのでしょうか・・・。

聖菜の事故の「今」から伝えたいこと

昨年2016年12月16日の公判にて、当事故では、「加害者に対し、禁錮1年6ヶ月の実刑判決」が下りました。
しかし、半年ほど経った今も、刑事施設への入所の連絡はなく、刑の執行はなされておりません。
半年の時が過ぎ、6月初旬、収監の通知が届きました。これはどういうことか・・・。

若者の半年と、高齢者の半年は、時間の流れが違うのです。

本日、禁錮1年6ヶ月の実刑判決が下りました。

刑事施設の空き状況と、高齢者の健康的事情で、どんどん時間がすぎていく

途中で具合が悪くなれば「執行停止」になる

刑事施設には、いつも空きがあるわけではなく、空きが出たら入所するような状況であったり、また、高齢者の時間の流れは若者のそれとは違い、今は元気でも数ヶ月後には突然具合が悪くなったりするものです。
受刑者が刑の執行前に途中で病気になったり、認知症になったり、血圧の異常等があった場合、医師の診断で「執行停止」になる可能性があるのです。

横浜での集団登校事故では、88歳加害者は認知症と判断され不起訴に

記憶に新しいところでは、横浜市南区で、集団登校中の小学生の列に軽トラックが突っ込み当時小学1年生だった田代優(まさる)君が死亡した事件で、88歳であった加害者は、精神鑑定の結果、「認知症」と判断され不起訴になりました。

つまり、今の制度では、「認知症」と診断されにい状況で、変わらず高齢者が危険な運転を続行し、事故を起こしてしまった結果、裁判や検査など色々時間を費やすうちに、半年の間に認知機能がさらに衰えてそれこそ認知症になってしまったり、他の身体機能の不具合なども起こし、後付けで当時も認知症だったなどという医師の診断が下れば「不起訴」になったり「執行停止」になったりしやすいのです。

いつまでも償われないことへの遺族としての気持ち

今回の加害者の高齢男性も、普通の、どこにでもいるおじいさんです。年老いた妻があったり、子があったり孫があったり、余生をこのような形で過ごさねばならないことは本当に残念なことでしょう。そこだけ切り取れば、本当に気の毒なことです。
また身体が思うようにならなかったり、若い頃に比べて病気も怖かったり、そのようなことも理解できます。
しかし、「聖菜」は、加害者によって、命を絶たれたことは事実です。きちんと、償ってほしいのです。

どんな理由があるにせよ、被害者にとって「今加害者が何をしているのか」を考えることも、大変に辛いものです。
高齢者の事故での遺族の方々もきっと同じような思いをされていることでしょう・・・。

だからこそ、このような事故が起きないよう、法で予めきちんと基準を設けていくことが必要だと考えます。

そのことによって、起きなくてよい事故がたくさんあったはずだと考えます。

稲垣聖菜母 & 管理者K